「So what?」という英語の慣用句がある。私流に訳せば「それでどうしたの?」という意味である。私が言う「大文字」言葉とは、聞いたときにはわかったような気にさせるが、あとから考えると「So what?」という疑問がわく言葉のことである。
テレビに登場するコメンテーターが口にする一見もっともらしい発言は、だいたい「大文字」言葉だと思って間違いない。私は彼らのおごそかな口調の割には無内容なコメントを聞くたび、「雨が降るから天気が悪い、悪いはずだよ。雨が降る」という俗謡を思い出してにが笑いする。
(中略)
これに対して「小文字」言葉とは、活字だけで世界がくっきり浮かび上がる言葉のことである。それは小さい声ながら、有無を言わせぬ力で読者をねじふせる。
物事を「説く」には「大文字」言葉が便利だが、物事を「語る」には「小文字」言葉を身につけねばならない。「語って説かず」。それがノンフィクションの最大の要諦だと、私は常々言ってきた。